前回のブログでは創業者ハインリッヒ・モーザーの功績から
ブランドの休眠まで歴史をご紹介しました。
ではその後、Hモーザーはどうなっていったのでしょうか…
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時は1990年代に入り、Hモーザーに光を当てた人物が現れます!
ハインリッヒの曾孫にあたるロジャー・ニコラス・バルジガー氏と
当時IWCの時計師だったユルゲン・ランゲ博士のお二人です!
(ここでIWCの名前がでるとは…
創業の手助けをしてくれたハインリッヒさんへの恩返しのようにも感じますね )
↑ユルゲン・ランゲ博士
※2010年当時の弊社スタッフがスイス出張時にお会いした写真が残っていました。
1995年からIWCで働いていたユルゲン・ランゲ博士は
IWCミュージアム設立の仕事をしている際、古いモーザーの懐中時計と出会ったそうです。
当社Hモーザーを知らなかったそうですが、IWC設立に多大な貢献をしたことや、
ロシアを中心に世界的に成功したブランドであったことを知り、オールドピースを中心に集め始めます。
Hモーザーのコレクションが縁で知り合ったふたりは協力して
2002年に時計製造会社である「Moser Schaffhausen AG」を設立、
「H.Moser & Cie.」の国際商標登録をして時計作りを再開したのです。
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こうして新生Hモーザーは、2006年にはバーゼルワールド(当時の世界最大の時計と宝飾の見本市)にて
創業者ハインリッヒのこだわりやシャフハウゼンらしい工業的で機能性の高い時計を発表します。
▼2006年発表のHモーザー(当時の当社BLOGより)
※ちなみにこのパーペチュアルカレンダーモデルはGPHGを獲得しています。
さらに2007年には、自社工場内にヒゲゼンマイの自社一貫生産ラインを完成させ、
トゥールビヨンに匹敵する精度を持つ「シュトラウマン・ダブルヘアスプリング・エスケープメント」を発表。
独創的なメカニズムと高精度で、美しくシンプルなデザインの新生Hモーザーは
時計ファンからの支持を得ていったそうです。
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しかしブランドの経営状況は芳しくないものでした。
(ランゲ博士は時計師であって経営のプロではないですからね…
その他リーマンショックやいろいろと要因があったようです…)
そこで、2012年にスイス有数の時計一族メイラン家に経営が移ります。
(主に高級時計を取り扱うMELBホールディングスが株式を取得)
MELBホールディングス会長のジョージ・ヘンリー・メイラン氏は
はじめは友人を介してHモーザーを知ったそうですが、
なぜHモーザーの再建に動いたのか2016年のインタビューでこう話しています。
「私がH.モーザーの買収を決めた理由は3つあります。まずは、ブランドが持っている歴史。ロシアで成功を収め故郷シャフハウゼンの発展にも貢献したハインリッヒ・モーザーの起業家としての生き方も尊敬できる。2つ目はH.モーザーの製品が素晴らしかったこと。例えば、針やダイヤルなどのディテールが美しく、シンプルでありながらも個性がある。シンプルと個性を両立させるのは思いのほか難しいものです。
そして最も大きかったのは、自社でムーブメントが製造できる点でした。H.モーザーはプレシジョン・エンジニアリングという会社を持っていますが、そこではひげゼンマイ、テンワなどのパーツを含めてムーブメントを内製できる体制が整っている。現在はマニュファクチュールをうたうブランドが多いけれど、ひげゼンマイまでつくれるブランドはスイスでもわずか数社しかない。これは大きな財産だと思いました。われわれの持っているノウハウやコネクションなどを駆使すれば、必ずや再建できると考えたのです」
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翌年2013年にはジョージ・ヘンリー・メイランの息子、エドゥアルド・メイランがCEOに就任。
就任と同時にメイラン氏は大胆な改革に着手していきます。
文字盤からあらゆる装飾を排除したコンセプトウォッチをはじめ、
以降ユニークなアイテムを次々と発表していきました。
2016年、Swiss Alp Watch。
2017年、Swiss Mad Watch。
2018年、Swiss Icons Watch。
※こちらはリリース前に一部のブランドから賛同を得られなかったため、
販売されることはなかった、幻のモデルとなっております。
気になる方は検索してみてください…
2019年、Moser Nature Watch。
どれも非常にユニークでメッセージ性もありますよね。
私も当時見たときはとても衝撃でした!
こんな自由でいいんだと感じ、次は何が出てくるのかワクワクしました。
Hモーザーを知るきっかけになった方も多いのではないのでしょうか。
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2021年に公開された動画の中でメイラン氏が
ブランディングについて話していますが、
Hモーザーの哲学が非常にわかりやすい内容になっています。
↓
Hモーザーはハインリッヒ・モーザーが築いた長い歴史と素晴らしい遺産に
伝統的な時計製造の技術をもつ高級マニュファクチュールです。
それでありながら、確固たる哲学を持ち合わせ、
現代的なエッジを腕時計に加えた唯一無二なブランドでもあるのです。
これからもブランドの成長が非常に楽しみですね!
最後までお読みいただきありがとうございました。
ISHIDA新宿/荻原