ISHIDA N43° スタッフブログ

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ISHIDA N43°の魚山です!

ユリス・ナルダンというブランドをご存知でしょうか。

正直、日本では他のブランドよりやや認知度は劣るものの、その技術力は高く、ユニークで革新的な発想で時計を製造するスイスの高級時計ブランドです。

今回はそんなユリス・ナルダンという時計メーカーについて語りたいと思います。

 

創業から175年の老舗ブランド!

1846年、スイス ル・ロックルに工房を設立.。主に懐中時計や船上での高精度計器マリンクロノメーターを生産し、数々のコンテストで賞を受賞するなど、航海用時計の分野においてブランドの名が知られていきます。

当時の航海は現代の様な高度な計器がなく、船乗りたちは命懸けでの航海が当たり前だった。

そんな不運な航海事故を起こさないよう、ユリス・ナルダンは不安定な船上でも高精度な計器を作った。

画像上:マリンクロノメーター、下:現行モデル

 

水晶振動子の時計の登場

クォーツショックにより、スイス機械式時計業界は危機的状況に陥り、数多の時計ブランドが姿を消しました。「機械式の時代は終わった!これからはクォーツの時代だ!」そんな事が囁かれていた中、ユリス・ナルダンは敢えて機械式時計での超複雑機構搭載機を開発していきます。有名なのはこちらの3モデル。

・1983年、古代の天文学観測機器を腕時計で再現した「アストロラビウム ガリレオガリレイ」を発表。世界一複雑な腕時計としてギネスにも登録されたモデル。

・1988年、太陽系惑星6つの動きを腕時計で再現した「プラネタリウム コペルニクス」を発表。その複雑な文字盤には惑星の位置関係を表し、地球が太陽を公転する時間を基に作られているためパーペチュアルカレンダーとして機能する。

・1992年、太陽、月、地球の位置関係を表す「テリリウム ヨハネス ケプラー」を発表。

上記にある天文学を基にした特殊な時計を次々に生み出し、その技術力により機械式時計としての再起に成功し、危機を乗り切った有数なブランドのひとつなのです。

 

伝統とこだわり

17世紀よりの伝統技法であるエナメルを継承する屈指の名門工房「ドンツェ カドラン」

非常に手間のかかる工程に、必要な技術ノウハウが必要とされる伝統技法。そこから生まれる文字盤は格別な美しさ。

 

技術力が評価され、高級文字盤としてユリス・ナルダンのみならず、誰もが知っている高級時計ブランドの文字盤まで製作する。

そんなドンツェ カドランを傘下に持つのもまたユリス・ナルダン。

 

革新

今日、耳にすることが多いシリコン製パーツ。

 

シリコンと聞くと馴染み深いイメージがある。しかし皆がイメージするようなシリコンラバーのようなものではない。

摩耗しにくく、熱・湿度変化に強く、劣化しない。非金属なので磁気帯びしない特徴も併せ持つ注目の素材。

シリシウムという物質で、ケイ素99.9999999999999%の高純度にて用いられ、その硬度はダイヤモンドに次ぐ硬度。

ユリス・ナルダンは、そのシリシウムに人工ダイヤモンドでコーティングした「ダイヤモンシル」を脱進機に搭載。

これにより、特に摩擦が大きいアンクル・ガンギ車のツメ部分の摩耗が抑えられ、部品の摩耗をさらに軽減させる。

摩擦は物が動く・進もうとする力の抑制になる。シリシウムはその特性上、低摩擦。つまり無駄のないパワー伝達が可能となる。

シリコン製パーツはユリス・ナルダン以外にも様々なメーカーが徐々に採用してきましたが、素材特有の加工の難しさと製造コスト面により、採用していないメーカーも多い。

そのシリシウムパーツの製造を手掛けるのがスイス ラショー・ド・フォンにあるシガテック。

この工房はミクロン単位で高精度なシリシウムパーツを製造する。

実はこの工房はユリス・ナルダンとシリシウム加工会社ミモテック社との共同出資により設立。

他の有名高級時計メーカーのシリコン製パーツの製造も手掛ける。

画像左:スケルトンX、左:フリーク

2モデルとも文字盤からシリシウム製のパーツを確認することが出来る。

https://ishida-watch.com/brand/post/?entry=ulysse-nardin

 

ブランドの認知度は宣伝の仕方やアンバサダーによる影響も大きな一因となる。

しかし、認知度の向上に重きをおくかどうかはブランドの志向による。

認知度=良い物ではない。

まずはユリス・ナルダンの奥深さを知っていただきたい。

実物を見て、実際にお手に取って、ご試着してみてはいかがでしょうか。